「あなたを罪に定めない」   06.12.31
                    ヨハネ8:1〜11

 「最後の訪問者」というクリスマスの物語があります。
 羊飼いや東方の博士たちが、お生まれになったイエス
さまの所から帰った後、そっと、ひとりの老婆がやってきます。
 そして、イエスさまに贈り物をします。それはリンゴでした。
 すると、その老婆の背筋が伸び、生気を取り戻し、別人に
なったかのように、生き生きとしはじめるのです。
 リンゴというのは、エデンの園で神さまに背いた罪の
シンボルです。
 老婆は、イエスさまに自分の抱えてきた罪を差し出したのです。
 イエスさまはそれを受け取ってくださる方として、お生まれに
なったということを表す物語です。

 クリスマスに、わたしたちは、自分の罪を受け取ってくださる
方の誕生をお祝いしたのです。だから、互いに「おめでとう」と
言い合ったのです。 その方が、「あなたを罪に定めない」と
語りかけてくださいます。
 この言葉が最初に向けられたのは、姦通の罪を犯した女性に
向かってでした。周りの人たちから言われるまでもなく、この女性は
自分が犯した罪の大きさを知っていたでしょう。それは、石打ちに
よる処刑に値することでした。罪ゆえに縮こまっている女性を前に、
イエスさまは、罪のないものから石を投げなさいと言います。
 誰も石を投げることはできず、立ち去りました。神の御子である
イエスさまは、罪がありませんから、石を投げることがおできに
なる方でした。
 しかし、おっしゃるのです。「あなたを罪に定めない」と。
 それは、石を投げるためでなく、罪を受けるためにお生まれに
なった方だからです。クリスマスの物語でリンゴを受け取るように、
罪を受け取るためにそこにおられるのです。

 「罪に定めない」との言葉は、罪を見逃すことでは
ありません。 罪を引き取ってくださったゆえの言葉です。

 「大丈夫、あなたの罪は赦されたから。さあ、行きなさい。」
 その言葉を聞いて、女性は、もう一度、顔を上げて生き始めます。
 わたしたちも同じように、今、イエスさまの言葉を聞かされます。
 そうして、新しい年の歩みを踏み出せるのです。